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我が家から巣立っていったもの

子供もおらず、猫も家庭内野良猫と化している我が家だが、そんな我が家から巣立って行ったものがいる。

ベランダでは前の家に住んでいた当時からレモンを一本育てていた。わりと生きのいいレモンの木で、小さいのに当時は年に二回ほどいい香りの花をつけたり、小さな実をつけたりしてくれた。実は自分で食べたこともある。酸っぱいのに軽い甘みがあって何ともいえないおいしいものだった。

実はこの木は今もベランダにおり、当時よりだいぶ大きくなっているのだが、すす病か何かになっているのか去年くらいから葉が黒いのだ。ただ新芽はしっかり出てきたので大丈夫そうだ。連休中にお酢で葉を拭いてあげようと思っている。それだけでも光合成がしっかりできるようになるとか。かろうじて生きてはいるので復活させてみたい。

この木を育てて3年くらい経った頃だろうか。この木に時々アゲハがやってくるようになった。そのうちに産卵されているのがわかった。ぎょえええ、これでは丸坊主になってしまう…。しばらくすると黒っぽい幼虫が何匹もついて、葉を食べるようになってしまった…。

ところが、私は卵も幼虫も一匹も退治していない。農薬もまいていない。気がつくと幼虫の数がどんどん減っていくのだ。やがて黒い幼虫がほとんど見当たらなくなった。2~3匹だが少し大きくなった緑の幼虫がいた。ところがこれも数日経つとたった1匹だけになってしまったのだった。

もう一度木を全部しらみつぶしに探したが、どう見てもアゲハの幼虫は一匹しかいなくなっていた。一匹くらいだったら木が全部丸坊主ということはないし、幼虫退治自体が実は苦手な私は、その幼虫を放っておいた。葉は何枚か食べてくれたが、新芽を食べたりすることはなかったのでそのままにしておいたら、いつの間にか終齢幼虫になってしまっていた。息を吹きかけたりすると赤い触角みたいのを出すのがおもしろくて、毎日からかっていた。

気がつくとこの幼虫もいなくなっていた。あれ?と思って枝を見たら、何と葉に隠れたあたりにさなぎがついているではないか。あ、無事さなぎになったのね。とそれからは毎日毎日さなぎを見る日が続いた。さなぎになったからといって無事に羽化するとは限らない。寄生蜂に寄生されていたらそれでもう終わりだからだ。

さなぎはだんだんアゲハチョウの色に変わってきた。どうやらこのさなぎは寄生蜂からも逃れたようだ。いずれここから蝶になって飛び立っていくのだろう。それがいつなのだろうかと思いながら毎日過ごしていた。

確かその日は台風が近づいてきており風がかなり強い日だった。朝植物の鉢を風から守るため動かそうと外へ出たその時だった。レモンの木からまだ薄い色の羽根をしたアゲハチョウが風に乗ってふわっと飛んでいったのだ。羽化して羽根が乾いてまだそれほど時間は経っていなかったと思う。強風に耐えられず飛んでいったのか、自分の意思で風に乗って行ったのかは不明だ。上手に飛んでいったようには見えなかった。

レモンの木を見るとさなぎは空になっていた。ああ、無事ここから成虫になって飛んでいったのだ、と感激した。しかし何でこんな風の強い、しかもこれから大量の雨が降ろうとしている日に羽化の時を迎えてしまったのか、そんなことを思いながらアゲハチョウが飛んでいった方向を見ていた。そして、しばらくさなぎの殻もそのままにしておいた。

アゲハは自分の巣立った木を覚えていて、メスである場合はその木に産卵に来ると言われているそうだ。しかしその後アゲハが産卵に来ることはなかった。羽化した日の天候がまずかったため生きられなかったのか、それとも実はオスの蝶だったのか。そのあたりは私にもわからない。

だとしたら最初にやってきてうちのレモンに産卵したアゲハチョウは何だったのだろう?確かその時はレモンの花が咲いていた。近所のどこか他のみかんなどの木に産卵するつもりで来たアゲハチョウが、レモンの花の香りに誘われてやってきて産卵してしまったのだろうか。そのあたりは何ともいえない。

もし我が家に子供がいないままであれば、唯一我が家から巣立っていったものとなるのだなあと思う。

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コメント

上品な短編小説を読んだような気分です。
いや、立派な随筆になっていますね。

しかし私にはとても観察できません。
何故って、あの幼虫には、、、
思い出したくありません。

チョウを撮影するときには胴体を見ないようにしています。

投稿: | 2008年4月27日 (日) 08時23分

こんにちは♪

うちは庭にグレープフルーツの鉢植えが2つあり、
毎年アゲハ牧場と化しています(笑)
花が咲いたり実がなったりするわけではないので、
どれだけ葉っぱを食われてしまおうと、そのまま。
気づくと葉っぱはほとんどなくなってしまいます。

ただわが家の場合、緑色のでっかい幼虫(つつくと
臭い角を出すもの)にまではなるものの、
さなぎになるのはほとんどいないようで、ましてや
蝶になるのは見たことありません。
(庭に放置してあるので、知らない間に巣立ってるのかもしれませんが。。。)
それにしても、数年前に初めてわが家に来たアゲハは、よくたくさんの
木の中からグレープフルーツを見つけ出して産卵したものだと
感心してしまいます。

投稿: るーさん | 2008年4月27日 (日) 10時53分

森さん、こんばんは。
随筆とはとんでもない、ありがとうございます。
蝶の写真を撮るのが上手な森さんですけど、そうでしたね…あの胴体を見られないとなると幼虫はもっとみたくないですよね…。ちなみに私も最初の頃の幼虫は見たくもありませんでしたが、終齢幼虫の模様は本当に見事なもんだと思ってしまい毎日観察してました。ちなみに毛虫、イモムシ類は決して得意じゃありません…。

るーさん、こんばんは。
グレープフルーツの鉢植え、それは食べたものから芽を出したものでしょうか?庭にあると言うことは寒さにも耐えて頑張っているって事ですよね。それはすごいです。小学生の頃5年育てた木を冬の寒さで枯らしてからトラウマになってしまいグレープフルーツは育ててません…。
毎年アゲハ牧場とはおそれいりました。葉を食べられても食べられても新芽が出てくるんですよね、柑橘類って。幼虫の間に一匹が約15枚ほど葉を食べるというのを最近になって何かで読みました。
緑色の幼虫にまでなっているものがいるなら、おそらく知らないうちにさなぎになり、蝶となって巣立っているものがいるのではないかなあと思いますよ。さらに毎年アゲハ牧場になるということだとすると、間違いなく代々続いている子孫がいるのではないかと…。
さなぎも緑色なのでかなり目を凝らさないと実は見つけられないものなのです。うちのは木が小さいのですぐ見つけられましたけれど。
ちなみに蝶の羽化はだいたい明け方のようです。うちから巣立ったのも明け方羽化して朝飛んでいったようです。
最初に初めて来たアゲハって本当に不思議ですよね。どこをどうやって探し当てたのだろう、と思います。ご近所に柑橘類を育てている家があったとしたら、そこからあぶれてきたのかもしれませんね。うちはその後調べてみたら近所にミカンを育てている家がありました。聞くと何もしなかったら毎年やはり丸坊主だとか…(最近は農薬散布しているそうです)。


投稿: タピアン | 2008年4月27日 (日) 23時09分

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