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思い出の笛

コカリナという笛がある。もともとハンガリーの笛らしいのだが、日本ではあまり知られていないみたいだ。長野オリンピックの時伐採された木で作られた笛ということもあり、長野の出身の方だと「知ってる」という話を聞くことがある。

この笛はとてもシンプルな笛で、筒型の木に吹き口がついて指穴が6つ。しかも管は閉じられている。上手に吹ければ優しいきれいな音が出る。フルートより簡単な作りでいかにも簡単に吹けそうな楽器と思いきや、これが意外と難しい。

まず安定した音を出すのが難しい。もともと楽器によって音域が1音違うなんてことはざらにあるので、まず持っている楽器がどの音域をカバーするのか知らないといけない。さらに長い時間吹いていると管が閉じている楽器のため水滴がたまり音が悪くなったりするのだ。定期的に水分を吸い取ったりする必要がある。

フルートがたくさんのメカを持っているのは、それだけで音を安定させる機能が充実しているということなのだろうか。指穴とそれをカバーするキーががたくさんあるのも、指づかいの違いで音を変えることができるようにするための便利な機能、ということか。

実際コカリナは習わず教則本を買って自分で練習した。ある程度吹けるようになってからは旅行などに持って出かけたりしていた。

ある時実家の両親、弟夫婦と5人で蔵王へ旅行した。この時もコカリナを持っていった。

蔵王ではハイキングをすることになり、私たちとツアーの数人、確か合わせて11人ががいっしょに蔵王の山に登った。この時はガイドさんが3人ついた。2人のガイドさんは見習い中の方だったが、1人は大ベテランだった。しかしこの人はおっかない一面を持っていた。見習い中のガイドさんがへまをした時は結構厳しい言葉で指導、山登りをしているメンバーが少しでも危険なことをすればきつくは言わないものの容赦はしなかった。さすがにみんなこれには驚き、おとなしく山のぼりをしていた。

そんな中で体力のない私はこのベテランガイドさんの後をついて登っていた。歩くのが遅く足元も危険(当時足首を捻挫しまくり、じん帯も伸びきってしまっていた)なのでガイドさんのすぐ後を歩くことにしたのだ。ガイドさんはそんなに早く歩いてはいないので歩きやすく、写真撮影を趣味とする私にとっては幸いだった。山に登って生まれて初めてコマクサが咲いているのを見て私は一人でカメラを持って大喜び。ガイドさんがおっかない事はすっかり忘れてハイキングを楽しんでいた。

山登りを楽しみ、コマクサや「おかま」を眺めたり、山頂からの風景を楽しんでから来るものは下山の道。山登りは登りより下りの方がきつい。早く下りる事はできるが足ががたがたになる。下山途中でメンバーがかなり疲労してきたのに気がついたベテランガイドさんは休憩を取ってくれた。

その休憩時間中に私はコカリナを取り出して少し離れた所で吹いていた。そんなに大きな音が出るわけではないので聞こえないだろうと思っていたのだが、音はメンバーに聞こえていたようで「何だ何だ、誰か笛吹いてるよ。」という話になったそうだ。家族はみんな誰が笛を吹いているか知っていたが黙っていたようだ。するとおっかない顔をしていたガイドさんがにこにこしていたという。みんなびっくり仰天したそうだ。

その後下山して、ホテルまでのバスが来るまでしばらく時間が余っていたためハイキングに参加したガイドさん、ツアーのメンバーと話をしていたところ、おっかないベテランガイドさんが私に近づいてきた。

「さっき休憩中に笛を吹いていたのはあなただよね。」

ひえええ、こりゃ怒られるか?と思っていたら意外な言葉が続いた。

「その笛で何が吹ける?もっといろいろ聴いてみたいんだけどね。」

えええ?と思いつつもエーデルワイスを吹いてみたところ、ガイドさんはにこにこしながらもっと聴きたいと…。こちらも調子に乗って日本歌曲を中心にいろいろ吹いてしまった。

「休憩中に吹いた時、うるさいって怒られるかなって思いました…。」正直にそう言うとガイドさんは大笑い。「その笛は木でできているんでしょ。木でできている笛だと嫌な響きにはならないんだよ。鳥の声のような自然の中にある音のように聞こえるんだよね。」そのような事を言われたように思う。

その後も調子に乗って、吹くか吹かないかは別として旅行となるとコカリナを持って行く私だった。

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